株式会社Kids Publicは埼玉県深谷市と協働し、2026年4月から市内において新たな小児医療モデルを本格稼働させた。市役所庁舎内に設けられた施設で実施されるのは、対面での看護支援とオンライン診療を融合させた“来所型”の小児科診療である。
この取り組みの特徴は、来所した患児を看護師が直接サポートし、その情報を基に遠隔地の小児科専門医が診察を行う点にある。いわゆる「Doctor to Patient with Nurse(D to P with N)」形式を採用することで、従来の自宅完結型オンライン診療では難しかった身体所見の把握を可能にしている。
制度面でも注目される事例だ。2026年4月に施行された改正医療法により、医師や医療法人でなくても設置できる「オンライン診療受診施設」が新たに位置付けられたが、地方自治体がこの仕組みを実運用に取り入れたのは深谷市が国内初となる。
本事業は、休日や祝日の夜間に不足しがちな小児医療を補完し、保護者の不安を軽減することを目的としている。利用は専用アプリからの事前予約制で、来所後は常駐する看護師が診療の準備を行う。看護師は専用機器を使い、のどや耳の状態、呼吸音などの観察や各種測定を実施し、必要な情報をリアルタイムで医師に共有する。医師は映像通話と送信されたデータを基に診断し、状況に応じて処方まで行うことができる。
現場で看護師が詳細な身体情報を取得する点は、本モデルの中核と言える。咽頭や鼓膜の状態、呼吸の様子に加え、インフルエンザなどの迅速検査にも対応することで、客観的な根拠に基づいた判断を支える。これにより、オンライン診療でありながら対面診療に近い質を確保している。
本格導入前の2025年には試験的な運用も行われた。その結果、利用者からは高い評価が寄せられ、全回答者が継続を望む意向を示したという。特に、医療従事者が現場にいることによる安心感や、適切な診察が受けられる点が支持された。また、本サービスがなければ救急外来を利用していた可能性のある家庭も少なくなく、地域の救急医療の負担軽減につながる可能性も浮かび上がった。
深谷市では以前から小児科医の確保が課題となっており、休日夜間の診療体制縮小を余儀なくされていた。今回の法改正を契機に、新たな選択肢としてこのモデルを導入した形だ。市は同時に産婦人科領域のオンライン支援も進めており、妊娠期から子育て期までを途切れなく支援する体制構築を目指している。