同展示会は、医療分野におけるDXの潮流を早くから捉えてきたことで知られる。今回もAIを中心に、IoT、ロボティクス、ウェアラブルデバイスなど先端技術を活用した製品が数多く並び、単なる実証実験にとどまらない実装段階の提案が目立った。
背景には、2026年4月から厚生労働省が予定する「医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業」がある。ICT機器の導入などを通じて業務効率化を図る医療機関に対し、1施設あたり最大8千万円、補助率5分の4という手厚い支援が打ち出されており、医療DXを後押しする環境が整いつつある。
補助対象には、スマートフォンやタブレット、各種ロボットといったハードウェアだけでなく、生成AIを活用したソフトウェアサービスも含まれる。会場では、こうした制度を見据えた現場支援型のAIソリューションが数多く紹介されていた。
中でも注目されたのが、医療専門用語に対応した大規模言語モデルを活用する生成AIサービスだ。音声認識の精度が向上したことで、記録作業における変換ミスが減り、実用性が大きく高まっている。キーボード入力や画面操作の負担を軽減できる点は、医療従事者だけでなく、高齢者やデジタル操作が苦手な患者にとっても利点となる。
電話対応を起点としたDXも進んでいる。病院外来業務の効率化を支援するAI電話エージェントは、患者からの予約やキャンセル、問い合わせを24時間自動で受け付け、AIで対応が難しい内容のみを人に引き継ぐ仕組みを備える。医師が開発に関与している点も特徴で、音声によるAI問診の開発も進行中だ。
AI問診分野では、問診情報を自動で要約し、想定される疾患や対応方針を提示するツールに加え、電子カルテ上の複数の臨床データをリアルタイム解析し、重症化の兆候を早期に検知するシステムも紹介された。医療従事者の意思決定を支援することで、患者の安全性向上と業務負担軽減の両立を狙う。
調剤領域でも自動化の動きが加速している。高精度OCRとAIを組み合わせた調剤支援に加え、薬剤の入庫から出庫までを自動化する調剤ロボットが実用化されている。高速なピッキング性能や省スペース設計により、待ち時間短縮と限られた店舗面積への対応を両立している点が評価された。
さらに、院内物流を担う運搬ロボットも進化を遂げている。用途に応じたサイズ展開や学習機能の強化により導入ハードルが下がり、エレベーターと連動して階をまたいだ搬送を自動化できる製品も登場している。日常生活の中でロボットの活用が広がる中、医療現場でも違和感なく受け入れられる段階に近づいている印象だ。
大阪開催ということもあり、大阪・関西万博で紹介されたデジタルヘルス技術をテーマにした展示も設けられた。指先の毛細血管を短時間で解析するセルフ検査機器は、非侵襲で手軽に健康状態を確認できる点が特徴で、公共施設やオフィスへの設置が想定されている。
また、AIスマートグラスを活用した記録支援や入力自動化の提案も複数見られた。実際のデモでは、音声認識による記録入力や音声指示による撮影が可能で、装着感や視認性も改善されている。一方で、音声や映像を扱うことから、プライバシー保護やセキュリティ対策の重要性も改めて浮き彫りになった。
医療分野でのAI活用が広がるにつれ、誤情報やバイアスといった課題への対応も一層求められる。利便性だけでなく、安全性や倫理面を含めた視点で技術を選択し、適切に運用していく姿勢が、今後の医療DXには欠かせないといえそうだ。