・介護や福祉事業を支援するコンサル会社が、看護師の名義を県をまたいで貸し借りし、訪問看護事業所の指定を不正に取得していた疑いが明らかになった。内部資料や元社員の証言で判明したもので、公的報酬を得る仕組みに利用されていた。
・事業所を設立する際には自治体への申請と職員情報の届け出が必要だが、同じ人物が他の地域で勤務していないかを確認する仕組みは存在しない。県をまたぐ場合は特に発覚が難しい。
・不正に関与したとされるのは、一般社団法人「介護福祉サポート協会」(東京)の代表理事(65)。同代表は「ケアラボ」(大阪市)を経営し、「アウル」の名で13都県に訪問看護ステーションを展開している。
・代表理事は取材に対し、名義貸しの事実を否定する一方で「誤解を招く可能性はあった。社内調査を進め、必要に応じて行政に相談・報告する」とコメントした。
・ケアラボ勤務の看護師によれば、他県の従業員の名義を利用して人員基準を満たしていたが、実際に勤務実態はなかったという。ある看護師は「代表理事から自分の名前を貸すよう求められた」と証言した。
・さらに協会は契約先の複数事業者にも看護師名義を貸していた。内部資料には、山形県と静岡県の「アウル」所属の看護師が、書類上は埼玉県内のステーションでも勤務していることになっていた。
・この埼玉の事業者は名義借りを含むコンサル料を協会に支払っていたとされ、市は情報提供を受けて7月に立ち入り検査を実施し調査を進めている。
・同協会を巡っては以前にも、訪問看護で法令違反となる診療報酬請求を助言していた事実が判明しており、今回の件は氷山の一角とみられる。