・薬の効果や副作用には個人差があることが広く知られており、唾液や血液を用いた遺伝子情報に基づくオーダーメード処方が注目されている。
・元小児科医で現在は薬理遺伝学を研究する曳野圭子氏は、治療現場で同じ薬でも患者によって効き目が異なることに疑問を抱き、研究の道に進んだ。
・特に集中治療室で、喘息治療薬や吐き気止めなどが効かないケースや、副作用が強く出すぎて使用できないケースに何度も遭遇してきた。
・薬は体内で酵素によって代謝されるが、この酵素の生成には遺伝子が関与しており、DNA配列の違いが薬の効果に影響を与えている。
・米シカゴ大学ではすでに患者の遺伝子情報を活用した処方が進んでいたが、子どもは対象外であり、活用できる遺伝子の種類も限定されていた。
・この分野は「ファーマコゲノミクス」と呼ばれ、薬が効かない人の遺伝子を調べて解析することで、薬の効き目と遺伝子の関連性を明らかにしていく。
・例えば「CYP2D6」という遺伝子の変異があると、吐き気止め薬の効果が薄れることが判明しており、日本人に特有の副作用リスクを示す遺伝子も報告されている。
・国際的な研究団体は、薬と関連性の高い34の遺伝子と165種類の薬剤に関するガイドラインを公表し、遺伝子検査の指針を整備している。
・日本では公的保険で対応できる遺伝子検査はまだ限られており、曳野氏は米国のように検査対象を拡大するには、まず国内のデータ蓄積が不可欠だと指摘している。
・日本臨床薬理学会は保険対象遺伝子の拡充を求める提言を出し、京都大学病院では現場で収集された検査結果と処方データの蓄積を進めている。
・本来は臨床研究によって科学的根拠を得る必要があるが、コストや倫理面の課題から難しく、現場レベルでのデータ活用が進められている。
・遺伝子情報に基づく処方は、無駄な投薬や副作用の回避にもつながると期待され、医療経済的にもメリットが見込まれている。
・薬の効果や副作用に対する遺伝子の影響は全体の2~3割に及ぶとされ、見過ごされがちなこの要素を医療に生かしていく取り組みが求められている。
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