・中高年で発症するうつ病や双極性障害に、アルツハイマー病などで知られる認知症の原因物質が関わっている可能性が、QST(量子科学技術研究開発機構)と慶応大の研究チームによって明らかになった。
・これまで、中高年以降の気分障害が認知症の前触れである可能性が指摘されてきたが、具体的な仕組みははっきりしていなかった。
・研究では、40歳以上の気分障害患者52人と健常者47人を対象に、PET(陽電子放射断層撮影)で脳内のタウやアミロイドベータの蓄積を調査した。
・その結果、タウの蓄積が健常者で約15%だったのに対し、患者では半数に認められた。特に幻覚や妄想など重い症状を持つ患者で顕著だった。
・アミロイドベータも患者側に多く蓄積しており、気分障害と認知症の関連性が示された。
・さらに、献体された208人分の脳を分析した結果、40歳以降にうつやそう状態を経験した人は、そうでない人よりタウの蓄積が多い傾向が見られた。
・うつ症状が出てから認知症が診断されるまでの平均期間は約7年とされ、初期段階での変化が後の発症につながる可能性がある。
・QSTの黒瀬研究員は、進行後では効果が乏しい認知症治療薬を有効に使うには、早期発見が不可欠だと指摘。
・問診が主な診断手法である現在の気分障害診断にPETを組み合わせることで、適切な治療の選択と認知症の兆候の早期把握が期待される。