
過疎地の赤字公立3病院が機能統合、救急拒否の悲劇を乗り越え黒字化を達成した地域医療再生の軌跡
2026/6/11
・奈良県南部の過疎地域「南和医療圏」で2016年に公立3病院を統合・再編して誕生した南奈良総合医療センター(大淀町、232床)が、持続可能な地域医療体制の構築モデルとして注目されている。
・再編前の3病院(町立大淀・県立五條・国保吉野)はそれぞれ赤字が続き、医師確保も困難となって圏外への患者流出率が約60%に達するという悪循環に陥っていた。
・2006年には旧大淀病院で、脳出血を起こした妊婦が約20病院に受け入れを断られ死亡するという事態が発生し、地域医療の崩壊を象徴する出来事として再編を促す大きな契機となった。
・2010年に県と関係12市町村が協議会を発足させ、2016年に「南和広域医療企業団」を設立。3病院を傘下に置き、急性期1病院・回復療養期2病院という役割分担体制を確立した。
・南奈良総合医療センターは「24時間365日、救急患者を断らない」方針を掲げ、屋上にドクターヘリを常駐させて南和医療圏全域の急性期救急を一手に担う。
・開院初年度の救急搬送受け入れ件数は再編前3病院合計の約2倍となる4108件に達し、2025年度の救急応需率は90%超を記録するなど、県平均を10ポイント前後上回る水準を維持している。
・3病院が同一の電子カルテを共有することで病床管理を効率化し、急性期治療後の患者を連携2病院へ速やかに転院させる仕組みが「断らない救急」を支えている。
・医師数は再編前の2倍以上となる常勤99人(2025年度)に増加し、若手医師の研修希望も増えるなど、へき地でありながら人材確保にも好転の兆しが見られる。
・経営面では2019年度から黒字に転換し、診療報酬の機能評価係数においても全国同規模1526病院中24位(2024年度)と、2018年度から上位3%以内を維持している。
・高齢化率44.8%(全国平均29.4%)という極めて厳しい地域条件のもとで実現したこの再編の成果は、人口減少に悩む全国の地方病院にとって有力な参考事例となりうる。
・小畠康宣院長は「利益より住民の命が最優先。信頼は一瞬で失われる。その順番を間違えてはならない」と語り、経営改善はあくまで地域医療の質を守るための手段に過ぎないという姿勢を強調する。






